a2 エンジニア的読書

某SIerに所属するエンジニアの読書記録。個人ブログなので所属組織の見解とは関係ないのでご注意ください。週1本が目標です。

第一歩を踏み出そう「日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法」(Rochelle Kopp 著)

日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法

日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法

初回の投稿は、過去にブログ発信した内容のリライトです。再読もしましたが、改めて読んでも気づきが多いので、おススメです。

本書との出逢い

本書は著者に惹かれたことがきっかけで読みました。本書の著者であるRochelle Kopp氏は、人事管理、異文化コミュニケーション、組織活性化などを専門とするコンサルタントです。著者を知るきっかけとなったのは、米Micosoft牛尾剛さんの講演およびブログからです。牛尾さんは2017年当時DevOpsを中心に講演をしておられ、その年のDevelopers Summit(通称「デブサミ」)にて私ははじめて講演を聴きました。当時私はDevOps関連の技術内容に興味があり、自社の開発手法を改善できないかと思ってました。ただその時は技術面だけに目がいっていたように思います。そんな経緯から牛尾さんのブログを拝見するようになり、「働き方を変えて生産性を高める8つの習慣」 から協業されているRochelle Kopp氏に行き着いたという流れになります。

その後、日本マイクロソフト主催 「de:code」にてスペシャルセッションとして牛尾さんとRochelle Kopp氏が登壇されており、上記の8つの習慣について講演を聞くことが出来ました。合わせて同イベントで限定先行販売されていた本書を購入でき、発売前に読めたことは光栄でした。(現在はもちろん発売中です)

本書を読んだ目的

当時、私はとある大規模なシステム開発の請負開発のアーキテクトとして活動していました。大規模なシステム開発なので、ウォーターフォール型の従来の開発手法がとられたことは言うまでもありません。それはそれで判断として正しいと思ってます。ただやはり、同じようなウォーターフォール型のシステム開発手法だけしか知らないのはこの先の変化に対応していくということに対して漫然とした不安感や危機感もありました。そのような環境だったので、アジャイル開発に興味がありました。それと同時に、日本型開発とアメリカ(シリコンバレー)の開発で何が違うのかということにも興味がありました。日本の開発はなぜこんなにゆっくりなんだろうかと。

エンジニアなので技術的な目線で物事を考えていたのですが、本書に出逢い、技術的要因でなくマインドセットが重要であることが物事を考える視点として頭の中に植え付けられました。

SIerに所属する方で、時代の流れに取り残されないように行動するにはどうすればよいか、顧客の要望にいち早く応えるためにはどうすればよいか、知的労働者の生産性向上をどのように実現すれば良いか、と言った課題を抱えている方が多いのではないでしょうか?そのような課題に対して、シリコンバレー企業の敏捷性を可能にしている マインドセットについて 知ることはとても意味があることだと思いますので、ぜひ読んでみてください。

ルーツは日本

私もそうなのですが、シリコンバレーと聞くとすごくハードルが高いことのように感じてしまい真似できないと1歩引いてしまいがちです。しかし、シリコンバレーが活用しているツール(スクラム、カンバン、リーンスタートアップなど)は、日本での思考様式に影響を受けてアメリカで発展したもの で、ルーツは日本の製造業にあります。シリコンバレーが日本から学んで発展させたものを私たちが再度学び直すことで、効率化や革新的な製品を生み出すスピードを得られるのではと本書では感じさせてくれます。

本書は、アジャイル開発やリーンスタートアップといったソフトウェア開発の手法について書かれていますが、それはあくまでも手法の1つでしかなく、本質的にはその背景にあるシリコンバレーが大切にしているマインドセットを理解する必要性を説いています。

マインドセット

本書で紹介しているマインドセットにはいくつかあるのですが、その中でもスピードを大切に考えているマインドセットを私の所感とともにいくつか紹介しておきます。企業全体、組織全体がすぐに変わる事は難しいですが、自分の率いているチームやグループ、自分自身や個人レベルから、マインドセットを理解して少しずつ取り入れていく事で、成功事例を作りムーブメントを起こしていく事が重要です。

Get Shift Done

日本語では「さっさとやってしまおう」みたいな感じです。何かを成し遂げることを大切に考えなければいけない。インパクトのあるものにフォーカスすることが必要で、競争の激しいところでは、無駄なことに割いている時間はないのである。その点、日本の企業の中に所属していると競争に晒されている感覚が鈍り無駄を無駄と感じなくなっているのでは、と考えさせられます。

Agility

素早く動ける事を重視している。Agilityにとって大切なのはスピードであり、開発期間が長くなればなるほど発売される可能性が低くなることを意味しています。商品化されないという点だけでなく、早く市場に出すことによりフィードバックを得やすいという側面を持ちます。素早い事は、集中力を保ちやすいというのは考え方は、新鮮です。

Fail Fast

素早く失敗することが重要視されている。Fail Fastイコール失敗ではないことに注目すべきです。仮説を立ててた検証するというプロセスをいかに早くやっていくか、できるだけ早い段階で間違いを見つけるかが重要視されていて、全体が失敗することを避けるためにそう考えられていることを理解するべき。失敗から学び次に生かす文化が重要であり、失敗が起きた時に誰のせいかと非難してしまう文化を除外しないといけない。頭ではわかっているが実践は難しいです。

Done is Better Than Perfect

完璧を目指すよりまずは終わらせる。この考え方は日本人に1番ハードルが高いのかもしれないです。上司でも顧客でも、完璧なものを提示しないといけないような感覚を持ってしまいがちですが、早く出してしまいフィードバックを得て改善するアプローチが成功への道だと考えられている。改善するアプローチがなく、ただ質の悪いものを素早く作るということではないことを注意したい。基本機能はできているということが大切である。

第一歩として

本書では、より具体的な手法について事例を盛り込みながら取り上げています。自分達の組織にあった手法を選び、それをカスタマイズしていくためは、手法を知るだけでなくその裏にある マインドセットを理解することが最重要事項 だと説いています。

アジャイル開発を取り入れたいと考えているマネージャー、チームリーダーの方はマインドセットの理解するために本書を読んでみてはいかがでしょうか。

合わせて、牛尾さんのブログも読み応えがありためになるので是非読んでみてください。

simplearchitect.hatenablog.com